米アマゾンの成長は、とどまるところを知らない勢いだ。
そのアマゾンサイト向けのコンテンツを作成する企業のひとつが米国ワシントン州シアトルのアマゾン本社近くにオフィスを構えるcontent26(コンテンツ26)。
同社は企業からの依頼を受け、米アマゾンやウォルマート.comなどECサイト向けに家電や日用品などの商品情報の制作を手がける専門集団だ。
サムスン電子をはじめ、ユニ・リーバ、フィリップスなど大手企業を顧客に抱える。
10年以上にわたりアマゾンのマーケティングにかかわってきたコンテンツ制作のプロフェッショナルにアマゾンのマーケティング戦略の強さの秘密を聞いた。
アマゾンは成長のカギは商品情報というコンテンツだと気づいた
Q.コンテンツ26はいつからアマゾンのコンテンツ制作に関わっているのですか?
3年前の01年、米国では一度、ITバブルが弾けました。そのころのアマゾンは書評を書くためのライターや編集者を雇っていたのですが、バブル崩壊によりレイオフしたのです。その後、事業が持ちなおし、アマゾンはカメラやモノキュラー(単眼鏡)といった機器類、さらには、CPG(コンシュマー・パッケージ・グッズ)と呼ばれるクリームやローションなど日用品も売るようになったのです。
そこで彼らからうちに声がかかりました。彼らは何千もの商品の名前、例えば、ジョンソンエンドジョンソンのベビー用シャンプーという商品名と、その製品番号がずらりと書かれた一覧表を元に、商品情報を製作するよう依頼してきました。その際、商品情報はどうやって作ったのですか?
ホワイト氏:インターネットで情報を収集して書いていました。内容は見出しと商品の特徴、写真。そんなコンテンツを数千件も作ったのです。
やがてアマゾンで買い物をする人が増えていきました。2007年には、プラスページというものを作るようになりました。特定の商品について写真やビデオを作り、製品のブランドを作っていくようなページです。
この時期、アマゾンは、世のあらゆる商品を売っていくことを自分たちのゴールに据え、そのために消費者があらゆる商品を認知できるように、商品の情報を届けていくことが重要だと考えるようになったのです。
2007年は、ネット業界でグーグルが存在感を増した年でもあります。「検索」がより重要になったわけですが、アマゾンは「検索」においては、コンテンツが大きな意味を持つと気づいたのだと思います。
商品情報は、ググるより、まずアマゾンで検索する
優れた商品情報を揃えておけば、消費者が集まってくるというわけですね。具体的には、どのような商品情報コンテンツを指していますか?
コンテンツ26のコンテンツディレクター、トリニティ・ハートマン氏(以下、ハートマン氏): 一例を挙げると、米アマゾンのサイトで「テレビ」を検索すると、上部に広告商品が表示されます。見た目には一般商品のようですが、商品について詳しい情報があり、双方向のイメージで、質問と答えもあり、このテレビについて豊富な情報を得ることができます。つまり、通常に検索するよりも、アマゾンのサイトにアクセスして情報を調べるほうが、より簡単に、詳しい情報を得られるようになっています。結果的に買わなくても、情報収集ができます。アマゾンが検索エンジンとなっているわけです。
Q.グーグルで調べるよりも、簡単に必要な情報が手に入るというわけですか。
ホワイト氏:2007年から2012年にかけてアマゾンは商品情報を充実させてきました。ある統計では、55%以上の消費者が、買い物の際にはアマゾンから検索を始めるとしています。また別の統計では、消費者の80%以上が、買い物をする際に1度はアマゾンのサイトで情報を調べる、という集計が出ています。
Q.検索エンジンの場合、広告が収入となっています。アマゾンは販売がメーンでは。
ホワイト氏:アマゾンもサイト内の広告掲載で、販売収入に加え、広告収入を得ています。
ただし、グーグルなど検索エンジンとは違います。グーグルの場合、消費者がクリックすれば、収入につながります。しかし、一度クリックした後に消費者がどこのページに飛んで行くか、どんな行動をとるかは分かりません。また広告を出す企業からすると、ネット広告に何百万ドルの広告料を支払いながら、自社の広告がどんなサイトに表示されるか分からない、という問題もありました。
この点、アマゾンは、広告を管理できているといえます。先ほどのように、アマゾンサイトで「テレビ」とうキーワードを打ち込むと、スポンサーがついた商品が表示され、これがクリックされるとスポンサーはアマゾンに広告料を支払います。消費者は商品情報のページに飛びますが、そこは引き続き、アマゾンのページであり、消費者はアマゾンのサイト内にとどまっているわけです。もちろん商品を買うこともあるでしょう。
現状、アマゾンの広告収入はグーグルやフェイスブックを下回っていますが、今後、アマゾンの広告収入は急激に伸びて行くとみられます。彼らをしのぐほどになる可能性もあるという見方もあります。アマゾンの強さは、実際に買うところまで導けるというアトリビューション(attribution、帰属性)にあるのです。