越境ECで海外販売をされていると、海外の購入者から『インボイスバリューを低くして郵送して欲しい』といった依頼が届くことがあります。
海外の購入者がこのような依頼をする理由は、インボイスバリューを低くすることで、関税などの通関コストが安くなるためです。
上記のような行為を『アンダーバリュー』といいます。アンダーバリューについては「沢山の越境ECのライバルセラーがしているから大丈夫!」との噂を耳にすることがありますが、非常に危険な行為なので直ちに辞めるようにして下さい。
本記事では、アンダーバリューによって消費税還付が取り消された裁判事例を解説いたします。
なお、越境ECで海外販売をされている方にとって、消費税の還付は非常に重要な収入源となります。本記事を理解して、コンプライアンスを重視した継続性のある海外販売を進めてもらえればと思います。
※消費税還付の重要性についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
「この記事は下記の方を対象にしています。」
・これから海外販売を始めようと検討されている方(初心者)
・既に海外Amazonで販売している方のうち、税務調査の対応をしたい方(中級者~上級者)
アンダーバリューは「脱税行為」との認識を持とう!
海外に商品を輸送するにあたり、「海外輸送する商品はこの価格です」と税関に申告しなければならず、この価格のことをインボイスバリューといいます。
日本から輸送された商品が海外に輸入される際、原則として、このインボイスバリューに対して関税などの通関コストが課税されますが、多くの国で、インボイスバリューが一定価格未満であれば非課税とされる制度があります。
したがって、このインボイスバリューが低ければ低いほど(非課税となれば特に)通関コストが安くなります。
例えば、下記の例をご覧下さい。
上記のように、アンダーバリューをする事により、関税などの通関コストが減少しました。
当然、海外の購入者から見れば、より安く購入できる方がよりメリットがありますので、アンダーバリューをする=価格競争力があるとして、越境ECセラーの方でアンダーバリューをしてしまう方が散見されます。
ただしアンダーバリューは『不当に』関税などの通関コストを減少させる行為のため、アンダーバリューは脱税行為であるという認識を持ちましょう。
なぜ消費税還付が取り消されたのか?
平成29年9月15日裁決の裁判において、海外販売をする際に利用した国際郵便でアンダーバリューをした事を問題視して、消費税還付を取り消しました。
下記にてポイントを解説いたします。
国際郵便はインボイスバリュー20万円超がポイント!
国際郵便では、インボイスバリューが20万円超の商品を海外に配送する場合、税関にて輸出許可証を発行してもらう必要があります。この輸出許可証は、消費税の還付を受けるために必ず保管しておかなければならない資料の一つです。
輸出許可証についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
一方、インボイスバリューが20万円以下の場合は、輸出許可証の発行は義務ではないため、消費税還付においても保管の必要がありません。本事例では、本来はインボイスバリューが20万円超であり輸出許可証の保管が義務であったのにも関わらず、アンダーバリューによりインボイスバリューを20万円以下として記載したことが問題視されました。
具体的には、下記のロジックで消費税還付が取り消されました。
みんなやっているから大丈夫、では危ない!
越境ECは海外販売が未経験のセラーの方が数多くいますので、アンダーバリューの危険性をよく理解せずにしてしまう方が散見されます。あくまで噂ですが、アンダーバリューを推奨するアドバイスをしている方もいると聞いています。
越境ECが流行した数年前までは、税務署もまだ越境ECに対する理解が深いとはいえなかったため、見逃されることがあったのかもしれませんが、今後は本事例のような消費税還付の取り消し事例が増えてくることも考えられます。
税務調査の時になって慌てないように、常日頃からコンプライアンスを意識して事業を進めて頂ければ幸いです。
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